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何作目になるんだろう 

椎名誠『菜の花物語』から
インスピレーションを受けて
書いてみました
が、
当初の方針とは大きく外れて
くらーいくらーいお話になっていってしまいそうになって
まあ、全体的にはやはりトーンの暗いお話になってしまいました

二人以上のメイン登場人物が出てくるのは
初めてなんじゃないかなと思います
だからはっきりいってひどいかも
もう少し練ってから書けばよかったかも
でも提出日は待ってくれないのかも

スペシャルサンクス:お花博士さん
         :S野君、J情きらり君(勝手に感謝)

自分まだまだ精進が足らんす。
「コスモス」  

もし自分が『  』時は、呼吸器系の病気で『  』のだろう。そんなことを高校時代に考えたことがある。三年前の陸上部時代、毎日のように元荒川の土手を走っていた。自分を追い込めば追い込むほど、喉の奥が乾き、口の中が酸っぱくなった。心臓が早鐘のごとくに拍動し、肺の末端まで痛みが染み込んできた。『  』ということはこういう苦しみのことを言うのだろう。『 』を抽象的にでも把握しておくことで、ぼくは『 』よりも上位に立って見下ろすことができる気がした。
高校時代のある秋の頃のできごとだ。夕日を背に走っていって、平和橋の下をくぐり、まっすぐに開けた道の遠くに、痩せた柴犬を連れて散歩している白髪のおじいさんの姿を見た。異常な感じがした。彼らの歩くゆっくりしたスピードにあわせて、二、三羽のカラスが群がってついてきているのだ。カラスたちは犬に対し、ちょっかいを出してはすぐ離れてを繰り返していた。おじいさんは帽子を振り回してカラスを追い払おうとするのだが、カラスたちはやめようとしない。
やがてぼくは彼らに追いついた。カラスを蹴散らすようにして走り抜けて行ったら、それでようやくカラスたちは逃げて行った。しかし、しばらく走っていって振り向いてみたら、やはり同じようにしてカラスが戻ってきてしまった。
カラスたちは知っているのだ。彼らが最も『 』に近い存在だということを。『 』は、元荒川の流れのように、常にぼくのそばに寄り添っている。走っていて足を滑らせたり、道を見失ったりすれば、すぐに『 』に引きずりこまれる。カラスたちはそれを知っていて、彼らのそう遠くない『 』を待っているのだ。

深夜一時過ぎになって、一人暮らしの家に帰ってきた。大学の近くで飲んできて、腹も減っていなかったので、水道水を渇ききった喉に流し込んだきり、すぐに布団にもぐりこんだ。飲みすぎたせいか、いつもより心拍数が高く、なかなか睡眠が訪れない。呼吸にも少し違和感がある。そういえば、終電に間に合うようにと、向こうの駅まで全力で走ったが、あれから既に三十分は経過しているので関係はあるまい。まるで遠足の前日のような興奮で、しばらくの間眠りにつくことができなかった。

走る夢を見た。左傍から水の流れる音がする。いくら走ってもゴールが見えない、いや、むしろゴールなど見えないほうがよかったのかもしれない。もう随分前から息が切れていて、過呼吸気味で、からだが熱くて、耳の奥が痛かった。気づいたらぼくは裸足で、血だらけになりながらアスファルトの上を走り続けている。止まってはいけないのだなと、なんとなく実感していた。どこかの草むらの影から真っ黒なカラスがぼくを見ているような気がした。


 高校2年の4月。ベッドに入って、いつものようにラジオのスイッチを入れ、それからまたいつものように七島にメールを送った
「 今日のメニューきつか
  ったねー。ヒザ大丈夫
  だった?       」

高校に入ってすぐに携帯電話を買った。周りの友達がみんなそうしたからだ。初めて女の子と番号を交換した、その相手が、同じ陸上部で同い年の七島で、メアドを交換して以来、何気ないメール交換がほぼ毎日休みなく続いていた。携帯の契約会社が二人で異なっていて、送ったメールが届くのと、返ってきたメールを受け取るまでの間に数分のロスがある。それで、だいたい十分おきにメールがやりとりされるのが、ちょうど二人の生活リズムに合っていた。絵文字も顔文字も少なかったが、それも二人で共通のポリシーみたいなものだった。彼女との間で、高校時代の三年間メールが絶えることがなかった。

「 私、家持ったら庭に桜
  の木を植えたいなあ  」

一見会話がつながっていないように思えるかもしれないが、こういう話題の突発的な転換も、二人の間ではいつものことだった。「ヒザの怪我の心配してくれてありがとう→練習ほんとに大変だったね→練習の時に見た学校の桜きれいだったね→私、家持ったら……」という連想の経過が、ぼくらにはわざわざ文字にしなくても伝わるのだ。

「 うん。学校の桜、満開
  だったねー。オレんち
  にも昔、桜の木があっ
  たんだよー      」

次の彼女の返信まで少し間があった。ラジオでは、いつものパーソナリティがいつもどおりにリスナーの投稿を読んで、時々ゲストに来た歌手の曲を流していた。もう十二時を過ぎて、うとうとし始めた頃、ようやく返信がきた。

「 それでね、私が『  』
  だら、その庭の桜の下
  にお墓を作って、そこ
  に入りたいなと思って
  る          」

彼女の突飛な発言には慣れていたが、今度ばかりは連想の経過が見えなかった。七島のメールにから『  』なんて言葉が出てきたこと今までなかったし、なぜそんなことを思いついたのかわからなかった。何かの冗談なのだろうと思い直して、ぼくはあまり深く考えずにこう送り返した

「 うーん。オレだったら
  、骨を粉々にすり潰し
  て、海にでも撒いても
  らえればいいな    」

何かの純愛系の映画で、昔の恋人の遺骨を砂漠に撒くシーンがあったが、そんな浅薄なイメージをそのまま文字にしてしまった。我ながら貧弱な発想だと思った。

「 4月になるとまたきれ
  いな花が咲くでしょ。
  そのたびにみんなが私
  のことを思い出してく
  れたらうれしいよ   」

「 忘れるもんか     」

七島はかわいいからな。と思った。七島のことは好きだったけれど、よそのどの男よりも七島を独占している自信があったから、取り立ててそれ以上、こちらから求めようとは思わなかった。付き合う、という意味をよくわかってなかったし、付き合うのだとしても、自然とそういう関係になっていくものだと思っていた。前年の夏に、彼女が他の男と付き合っていると知るまでは、の話であるが、それでもお互い今までの関係を壊したくなかった。結局、その男よりもぼくのほうが頻繁にメールしていたみたいだった。

「 ううん、コウちゃんだ
  っていつか『  』で
  しまうよ。それに、私
  を思い出してくれる人
  がいなくなったとして
  も、私の桜の木の下で、
  みんながきれいだなっ
  て思ってくれたらそれ
  が一番いいよ     」

そんなものなのだろうか。笑うとえくぼを見せる普段の七島と、遺骨になって桜の木の根元に埋められてしまう七島とがうまく結びつかなくて、返答に困ってしまった。耳に勝手に入ってくる流行りの歌を、ぼうっと聞いているうちに随分と時間がたってしまい、それから結局、「そんなものなのかなあ」とだけ送った。
七島はもう寝てしまったみたいだった。


朝になって目が覚めても、呼吸の乱れは収まらなかった。頭痛はなく、酒は抜けているようだったが、心拍がずっと高まったままで、まるで喘息のときみたいにひゅーひゅー音がした。しばらく家で休もうかと思ったが、今日はゼミで発表がある。朝飯は食べられそうになかったので、顔を洗って着替えたら、すぐに外に出た。
ゴミ置き場にカラスが群がっていた。それはいつもの光景となんら変わりなかったのだが、おかしな夢を見たばかりのぼくには、散らかったビニール袋とその中身が、何か違うもののように思えてしまった。ぼくは自身の陳腐な想像力をのろった。

予定の電車までもう余り時間がなかったから、駅までの道をずっと走っていった。信号を三回無視したが、それでようやく予定の電車に乗り込むことができた。息が苦しい。肺の中が、まるでナイフで切り裂かれたように痛い。呼吸が収まらない。ドアの傍にかがみこんで、しばらく休むことにした。右手で左腕の脈を押さえた。いつもなら――現役時代なら――走り終わった直後の脈拍数がだいたい百六十くらいで、すぐに百くらいまで収まるのだが、しばらく休んでからでも、十五秒間計って三十八回……。
「お兄ちゃん。大丈夫かい?」
体格のいい中年のサラリーマンに、野太い声で話しかけられた。ええ、だいじょうぶです……答えようとしたその瞬間、胸の辺りでぷちんと、何かがはじける音がした。
「大丈夫か……おいっ! 誰か救急車を呼ぶんだ! 次の駅で降ろすぞ! 」



 相変わらず、ぼくは夢の中を走り続けていた。息も絶え絶えで、足元もおぼつかなかった。自分の意志で走り始めたはずなのに、今ではまるで何かに追われているみたいに、『  』もの狂いで走っていた。汗が体中から吹き出て、運動着が体にはり付いて不快だった。
 橋をひとつ越えて、ふたつくぐり、みっつ迂回したところで、視界が急にピンク色に染まった。途端、秋風が涼やかに感じられて、呼吸が整って脈拍も落ち着いてきた。アスファルトが途切れてそこからクローバーの絨毯になり、傷だらけになった裸足をやさしく包んでくれた。体中の突き刺すような痛みが、野原に足を踏み入れるとともに引いていった。ピンクがだんだん濃くなっていって強い光を放ち始めた。もし天国があるのだとすれば、ちょうどこんな風景なんだろうと思った。絶えず地面をけり続けていた血まみれの足が、ほんの少しだけ宙に浮かんだような気がした。



あまりの眩しさに目を覚ました。少しだけ隙間を開けた窓から、朝の穏やかな光が差し込んでいる。
「目覚めたのね。すこし寒いかしら」
一瞬、七島かと思った。白い白衣の、黒髪を短くまとめた女性が、静かに窓を閉めてくれた。七島よりずっと年上の、それでもかなり若い看護婦さんだった。
ふと我に帰ると、僕は無機質な白いベッドに横になっていて、口に呼吸用のマスクが、鼻の下には管が一本くっついていた。ぼくは汗ばんだ体を少し起こして、聞いてみた。
「あの花は……? 」
「ああ、あの花ね。昨日お見舞いに見えていた方が飾ってくださったんですよ。」
窓際の細いガラスの小瓶に、白と茶の小さな花が四、五本さしてある。
「あれは、コスモスですか? 」
「ええ、変わった色でしょう? お花屋さんだとあまりピンク色のものって置いてないのよね。」
 そうか、あれはコスモスだったのか。絡まっていた糸が、解けて一本にまとまった気がした。走っていて一番つらかったのは、往路の、元荒川が中川にぶつかって折り返す、一歩手前の辺り。ちょうどあのあたりに野生のコスモスが群生していて、そこだけ一面ピンク色のゲートのようになっていた。ここにたどりつくと、もうすぐ折り返しなんだってわかるから、少し安らいだ気持ちになれた。ここでペース配分を作りなおして、呼吸を整えることができたし、まだまだいけそうだなって思ったときは少しピッチを上げた。
 「患者さん、この病院に運ばれてきたとき、肺に何箇所も穴が開いてたの。気胸っていう病気なんだけど、あなたの場合かなり深刻な状態だったのよ。急いで手術して――今は随分楽になったと思うけど、とても苦しかったでしょう。」
 「・・・・・・よくわかりません。つらかったような気もするけど、走ってるのと同じような感覚でした。今、ちょうど走り終わって一息ついてるみたいな感覚です。」
 「あら、強いのね。どうりで回復が早いわけか。何か運動でもやってたのかしら? 」
 「ええ、まあ高校のときにちょっと」
 「ま、体力に自信があるのはわかったけど、まだしばらく休んでなさいね。」
 そう言って、看護婦さんは病室を後にした。
 
 「 ぼくは、いちめんのコ
   スモスに埋もれて『 
    』たいな、と思った。
   決して『 』を望んで
   るわけじゃなくて、走
   って走ってたどり着い
   た先に、いつかそこに
   たどり着くことができ
   たらいいなと思うよ  」

 あの頃は不可解だった七島のメールに、四年の歳月を経た今なら、自信を持って返信できるような気がした。大学に入ってからほとんど連絡の取っていなかった七島に、久しぶりに会って話がしたいと思った。それから、もういたずらに『死』を語るのはやめよう、と思った。生きるんだぞ、と、今度は声に出して言った。
 
― 完 ―
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コメント

よ!

ぼくもさいきん
じぶんのきもちを

きもちっていうか
かんがえてることを

かんがえてることっていうか
なんかこう、わいてくるものを

どーにかひとにつたえたいと
おもっております


うまくいかないものですにゃー

読ませて頂きました。
前回に比べてかなりのレベルアップがあったように感じました。
内容は決して明るくないですが、文章(文体)そのものは暗くなっていないかと思います。

あえて言うとすれば『深夜一時過ぎに~』の段落から何点か。
『一人暮らしの家』は、口語なら使いますが文語だと不適切かもしれません。『家に帰ってきた』という叙述だけして、別の文で『一人暮らしをしている』ことを説明した方がいいと思いました。
『水道水を~流し込んだきり』の『きり』は『続くはずの行為が生じないこと』をいう言葉なので(辞書参照)『布団に入った』という動作が続いているのはあまりよくないです。『流し込んだだけで』の方が良いと思います。
『そういえば~関係あるまい』の部分では、おそらく主人公の頭の中で以下のようなことがあったと思います。
・そういえば、駅まで全速力で走った
・でも、もう三十分も前の話だ
・じゃあ、関係ないか
この一連の思考が一つの文に収まっているため、情報量が多く、理解するのに少し時間を要してしまいます。つまり文章の途中で立ち止まってしまうわけで、いわゆる『テンポ』の悪い作品になってしまいます。文を二つに分けて逆接で繋ぐなんてどうでしょうか?

……色々と細かく指摘しましたが、全体的には良作だと思います。
これからも頑張って下さい。

こんな長文読んでくれたっていうだけでほんとうにうれしいです
感謝です

>七島さん

忘れてたけど
君にもスペシャルサンクス!

>とあるさん
すごいです。とあるさん。
授業の百倍ためになります。

てか木4限の文芸創作入門
あれ、ぜんぜんだめです
先生、絶対読んできてないし授業に持ってくる作品10分で決めるらしいしいろんな学生の作品が読めるのはいいけど先生のコメント適当だから誰も改善していかないし先生うんちくしか語らんしあーこんなん聞いてられんよってかんじなんです

いっそ中沢ゼミとか見学してみようかな、と思ってます。

というか、とあるさん
親身なコメントとても感謝不尽なんですが
匿名だと、荒らしと紙一重なので
うちのブログの治安のために
もう少しわかりやすい名前に
してもらえるとうれしいです。

>もう少しわかりやすい名前に

じゃあ、これからは『ゼミの先輩』にします。

ついでに言うと、某ビッグバンドサークルにいた某ラッパ吹きです(笑)

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